歌舞伎町にある「深夜営業のパフェ専門店」
最近、夜パフェが食べられるお店が増えていますが、2019年6月、歌舞伎町に夜パフェ専門店「RoytoSilo」(ロイトシロ)がオープンしました。
SNSに、かわいらしくておいしそうなパフェの写真がたくさんアップされていて、とても気になっていたのです。
夜の22時に開店、座席数はカウンター9席のみという深夜営業の小さなスイーツ専門店。
そんな「歌舞伎町の深夜カフェ」には、いったいどんなお客さんがやってくるのか?
パティシエの和志さんとギャルソンの玄太さんのおふたりに、お店への思いをお伺いしました。
歌舞伎町だったら需要があるんじゃないかと考えた
▲パティシエの和志さん(左)とギャルソンの玄太さん
──なぜ歌舞伎町でお店を開こうと思われたのですか?
和志さん:もともと歌舞伎町のクラブでダンスのイベントがあって、ダンサーとしてレギュラー出演していたんですが、そのイベントがなくなってしまって、お客さんが集まれる場所が欲しいと思っていました。
和志さん:もうひとつは、自分たちはゲイカップルなんですが、ゲイタウンでお店をやっても、ゲイの人か、ゲイに理解のある人しか来ない。そうではなく、色々な人が交差して、たくさんの人に注目してもらえる歌舞伎町という街で、世の中には自分たちみたいなカップルもいるし、色々なカップルのあり方があるということを示せたらいいかなと思いました。
──なぜ、カフェでなくて「夜パフェ専門店」という形にしたのですか?
和志さん:普通のカフェをやっても埋もれてしまうと思ったからです。自分は10年ぐらいパティシエをやってきたんですけれども、夜に営業しているお店で、本格的な甘いものが食べられるところがないと感じていました。歌舞伎町には夜のお店が多いですが、まだ夜パフェのお店はなかったし、歌舞伎町だったら朝までスイーツを食べたいという人たちの需要があるんじゃないかと思いました。
もともと、規模はあまり大きくするつもりはありませんでした。カウンターで、一人で回せるくらいお客さんとの距離は近いほうがいいと思っていました。実際、自分たちとお話しすることを楽しみに来てくれるお客さんもいます。
▲店内には、さまざまなペンギンの絵が飾られている
──確かにちょうどいい広さのお店ですよね。お店の中にはペンギンのグッズがたくさん飾ってありますね。
玄太さん:2人でお店を始めるにあたって、キャッチーな動物をモチーフにしようと思っていたのですが、もともと好きだったペンギンを選びました。ペンギンが同性愛の象徴だということは後から知って、運命を感じました。それで、オスのペンギンのカップルが子どもを育てる実話を描いた絵本『タンタンタンゴはパパふたり』から、店名をつけました。「ロイトシロ」は絵本の中に出てくるペンギンの名前です。
お店に飾っているペンギンは、クリエイターさんの作品をネットで見つけて集めています。ぬいぐるみはお客さんが持ってきてくれることもあるし、2人で水族館に行った時に買ったりして、どんどん増えていますね。
──お店を開くために、クラウドファンディングをされていたとか?
和志さん:クラウドファンディングで開店資金を集めたら、思った以上にお金が集まって大成功でした。クラウドファンディングにしたのは、広告効果も狙っていたんです。SNSを利用して積極的に発信していったのも、お客さんの身近な存在になりたいと思ったからです。
▲スプーンもペンギン!
──オープンされてからの反響はいかがでしたか?
和志さん:最初は友だちが来てくれると思っていたら、意外なことに9割ぐらいが新規のお客さんでした。
──お客さんはどんな方が来られるのでしょうか?
和志さん:歌舞伎町で働いている方もいらっしゃいますし、単純にパフェ好きな方やペンギンが好きな方もいらっしゃいます。夜のお店ですけど、お酒をメインにしていないので、終電前はお茶やコーヒーを頼まれる女性が多いです。
ゲイの方が多いということもありません。終電の前と後では確かに客層は違いますが、夜のお仕事の方だけがいらっしゃるわけではないんです。
──なるほど。幅広い層のお客さんがいらっしゃるんですね。お客さんは、どうやってお店のことを知って来るのですか?
和志さん:ツイッターを見て来る方が多いですね。歌舞伎町というと、なかなか行きづらいという人も多いと思うんですけど、西武新宿駅が近いので、そちらから来ると歌舞伎町の繁華街を通らずにお店に来られますよ。
口どけ、軽さ、甘み、酸味。トータルバランスを考えたパフェ
▲ホワイトチョコとミントのパフェSILO (1,300円・左)、いちごとピスタチオのパフェTANGO (1,500円・右)
──見た目もかわいいですね。
和志さん:パフェは自分で考えているんですが、2週間に1度、変えています。1カ月前までに作って、撮影してSNSで告知しています。季節に合わせてメインになるフルーツを決めて、ケーキやフランス菓子をイメージして作っています。
このお店をやるまでは、パフェを専門で作ったことがなかったので、まずケーキを考えて、それをパフェにアレンジするような感じです。
──面白い発想ですね。ケーキとパフェでは作るときの発想が違うものなのですか?
和志さん:パフェがケーキと違うところは、アイスクリームが使えることが大きいです。柔らかいクリームでも器の中では形を保てるので、すごく口どけの良い層を作ることもできます。
クリームだけでなく、さっぱりとしたジュレの層を組み合わせるなど、軽さや甘み、酸味など、トータルのバランスを考えるので、最後まで重くならずに美味しくいただけるようにしています。パフェは、ケーキよりも幅広いものができて面白いと思います。
──カウンターのお客さんの目の前で作るんですね。
和志さん:ライブ感を大事にしています。レストランでアシェットデセール(皿盛りのデザート)を作っていたことがあるので、その時の経験は生きていますね。
──旬のフルーツから決めるということは、やっぱり季節感を大事にしているんですか?
和志さん:そうですね。季節やイベントごとにお客さんが喜ぶ顔が見たいですね。深夜営業のお店ですが、昼間忙しい人にも、季節を感じてほしいと思っています。月2回メニューが変わるので、毎週来てくださる方も多いです。
──最近、お昼の営業も始めたそうですね。
和志さん:クラウドファンディングをしていた時から、お子様や夜外出できない方にも何かお返しがしたいと思っていました。実際にお昼にお店を開けてみたら、反響が大きかったです。席が限られているので予約制なのですが、すぐにいっぱいになってしまいました。
──このお店をやりながら、昼間も働いているそうですが、それはどうしてですか?
和志さん:経済的には、このお店だけでもやっていけるのですが、昼間の仕事を辞めていないのは、夜中心のリズムになって、普通の価値観がなくなってしまうのが怖いからです。昼間動いていると、世間の流れもつかめますし、一般のお客さんと同じ感覚を忘れたくないという気持ちがあります。
──今後はどんなことを目指していますか?
和志さん:いろいろな人とコラボしてみたいと思っています。今年はアイドルの方とコラボすることが決まっています。その方のマスコットキャラクターをイメージしたパフェを作ります。あとは、歌舞伎町が活力のある街なので、地域に密着した活動をしていけたらと思います。
食事の後やお酒を飲んだ後でもペロリと食べられてしまう
▲常連のお客さんもパフェの味に太鼓判
お客さんにもお店について聞いてみました。
──お店の魅力はどんなところにあると思いますか?
お客さんA:2人があったかくて話しやすいから、居心地がいいですね。やっぱり2人の魅力だと思います。
お客さんB:パフェは、めちゃめちゃ美味しいです! オリジナリティがあって、他では絶対に食べられない味です。全部食べたくなっちゃうから、2人で3つとか、誰かと一緒に来てシェアするのがおすすめです。
▲キャラメルとバナナ、オレンジのパフェROY (1,300円)
ロイトシロのパフェは、食事の後やお酒を飲んだ後でもペロリと食べられてしまう、ほどよいサイズ。なにより色々な味や食感も楽しめるので、味わっていると幸せに包まれているような気持ちになります。
酔っ払いはお断り、女性ひとりでも安心感のある空間で、甘いもの好きの男性も、気兼ねなく行ける雰囲気です。かわいいパフェで癒されたい人は、訪れてみてはいかがでしょうか。
お店情報
RoytoSilo(ロイトシロ)
住所:東京都新宿区歌舞伎町2-41-3 レオ寿ビル3F
電話番号:050-3579-8013
営業時間:22:00〜翌3:30(LO3:00)
定休日:月曜日、火曜日
書いた人:西野風代
ライター&編集者&夜遊び探検家。東京生まれ。週刊誌記者、女性誌編集を経て、タイに移住。雑誌やウェブのライター、フリーペーパー編集長、コーディネーターとして活動後、現在は東京を拠点に、旅やカルチャーなどの記事を執筆。
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January 24, 2020 at 07:00AM
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