動物はそれぞれ,自らの生活環境に合わせて必要な音や光を捉える感覚を研ぎ澄ませてきた。その仕組みは驚くほど理にかなっている。耳の中には音波を周波数ごとに微細な繊毛の揺れに変換する仕組みがあり,これは音の本質が空気の振動であることを反映している。自然界の鮮やかな色が幅広い波長の光の連続的スペクトルで構成されていることを知っていたかのように,目には波長帯別に役割を分担した色覚細胞が存在する。これら感覚器官の仕組みには,進化というプロセスが自然から巧妙に取り込んだ音や光の物理学を見て取ることができる。
そしてそれは,ミクロの世界を語る量子力学についても例外ではない。ヨーロッパコマドリという渡り鳥がどうやって方角を把握するのかを調べた行動実験の結果から,この鳥が地磁気の磁力線の角度を認識できていることが明らかになった。その仕組みにはクリプトクロムと呼ぶ光受容タンパク質が関わる。クリプトクロムは磁力線の向きを知らせる量子コンパスとして働く。
2022年5月。量子科学技術研究開発機構で動物の磁気感覚を研究する新井栄揮上席研究員らの研究チームが,伝書鳩に用いられるカワラバト(ドバト)の研究から,量子コンパスの理解を前進させる成果を発表した。量子コンパスは単に北がわかる方位磁針のようなものではなく,磁場の強さまで測定できる優れものらしい。しかも,こうした磁気感覚は渡り鳥だけの特殊な能力ではなく,多くの動物が持つ可能性が出てきた。
続きは日経サイエンス2022年8月号にて
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「動物の体内コンパス」D. カステルベッキ,日経サイエンス2012年5月号
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